2019-2020年の森林火災

 2020年8月、カリフォルニア州で大規模な森林火災が発生しました。雷が原因となって燃え始めたこの火災は、乾燥したアメリカ西部特有の気候のために、瞬く間に燃え広がり過去最大規模の被害をもたらしています。

 カリフォルニア州の森林火災以外にも、近年世界各地で深刻な森林火災が発生しています。この記事では、それらの中でも特に規模が大きく、日本でも大きな注目を集めた二つの森林火災について紹介します。

アマゾンの熱帯雨林火災

 2019年、アマゾンの熱帯雨林では、およそ10万件の火災が発生しました。焼失した熱帯雨林の面積は九州地方(42,191㎢)よりも広く、1分間にサッカー場1.5個分の面積が燃えるという、恐ろしい速度で森林火災が進行しました。このアマゾンの熱帯雨林消失は、世界中で注目され日本でも報道されたため、多くの人が記憶に残っているのではないでしょうか。

 当時、この火災は国際的な問題となり、多くの国がブラジルに対する支援の声をあげました。しかし、ブラジルのボルソナロ大統領はこれらの支援を強く拒否し、アマゾン火災はブラジルの問題であると主張しました。フランスのマクロン大統領が「生物の多様性や温暖化対策のために、アマゾンを再生しなければならない。」とコメントする一方で、ボルソナロ大統領は、「国土の半分以上を保護区域にしているなんて耐えられない、経済発展の妨げになる。」とコメントしました。

 発展を遂げた先進国が森林価値の重要性を訴える一方、森林を多く保有している途上国は、その価値を失うこととなっても自国の発展を望んでいます。ブラジルの熱帯雨林火災は、先進国と途上国との間にある深刻な格差問題と、森林開発無しには生計を成り立たせることができない国民たちの現状を明らかにしました。事実、保護方針から開発へと大きな転換を行ったボルソナロ大統領に対して、現地の人々は、土地が広がるために賛成の意を示すこともあるそうです。

 2020年になっても、アマゾンの熱帯雨林火災は発生しています。1~7月にかけて、1万3700㎢もの森林が焼失しました。2019年の火災に比べて焼失の速度は劣るものの、決して無視できるものではありません。しかし、ボルソナロ大統領は、8月11日の国際会議において「アマゾンが焼失しているという話はうそだ」とコメントしました。

オーストラリア 燃えるユーカリの森

 2019年末に発生したオーストラリアの山火事は、数年来の干ばつや、乾燥した気候、熱波などの異常気象も重なり、2020年になっても燃え続けました(現在は豪雨のため終息したとみられています)。強風の影響もあり、火災で発生した煙は周辺の都市に流れ込み、煙害も引き起こしました。

 オーストラリアの木々の多くは、ユーカリと呼ばれる植物で構成されています。このユーカリの樹皮や葉には油分が多く含まれており、火が付くと強い火力となり、延焼拡大の一因となります。このような植物の特徴も加わり、オーストラリアの森林火災は広範囲に広がり、環境に深刻な影響を与えました。

 この火災では、2020年1月の時点で、11万2000㎢の森林が焼失し、8000頭のコアラを含む4憶8000万匹の野生動物が犠牲になりました。特に、燃えるユーカリの森に取り残されてしまったコアラの映像は日本でも報道され、多くの注目を集めました。

 オーストラリアには、コアラやカモノハシなどの貴重な動物が数多く生息し、その生息場所も限られています。したがって、このような火災でそのすみかが失われてしまうことは、その種や生態系に大きな影を落とすことになってしまいます。

参考文献

NHK ダイジェスト,2019.アマゾン火災 背景に何が.2020.8.27.

読売新聞オンライン,2020.ブラジル大統領「アマゾン焼失はうそだ」…森林火災多発も開発優先する姿勢.2020.8.27.

2019年~2020年/オーストラリア森林火災(BUSH FIRE・山火事)
現地調査写真レポート/山村武彦.2020.8.30.

コメント

  1. […] 2019-2020年の森林火災 […]

タイトルとURLをコピーしました