絶滅危惧種をなぜ守る必要があるのか

 地球温暖化をはじめとする環境問題は近年注目され、そのような環境変化の中で絶滅の危機にある生き物たちにも人々の関心が向けられるようになりました。

 絶滅危惧種を保全しなけばならない。このような主張は多くの人賛同を得て、実行のために様々な活動が行われています。

 では、なぜ絶滅危惧種を保全しなければならないのでしょうか。この記事ではこのような疑問について考えていきます。

生態系はバランスが必要

 生態系は一つの生物種から成り立つことはなく、必ず複数の生物が関与しています。さらに、生態系が維持されるためには、これらの生物のバランスが必要なのです。仮に一つの種が極端に少ない、あるいは減少してしまうと、生態系は崩壊してしまいます。

 生物が絶滅すると、生態系においてその生物が果たしてきた役割の部分が空席になり、バランスが崩れてしまう可能性があるのです。もちろん、すべてのケースにおいてそうなるのではなく、また別の生物が代わりにその役割を担うケースもあります。

キーストーン種

 生態系のバランスについて考えるときに、最も重要なものの一つがこのキーストーン種です。キーストーン種とは、生態系の中でも中心的な役割を果たし、その種が絶滅したときには、それ以上の影響を生態系に与える(他の生物の絶滅や生態系そのものの崩壊を招く)種のことを指します。したがって、キーストーン種は特に保全しなければならない生き物なのです。

 キーストーン種の絶滅

 キーストーン種が絶滅・減少するとどうなるのか。ここで一つの例を紹介します。

 1990年頃、西アラスカのアリューシャン列島海域では、ラッコがシャチによって捕食されるようになりました。このため、ラッコの数が25%にまで激減しました。その結果、ラッコに捕食されるウニは800%増加(8倍)、ウニに捕食されるケルプ(大型海草)は10%に減少しました。ラッコの数の変動が、この海域の環境に大きな変化をもたらしたのです。もし、ラッコが絶滅してしまえば、この海域から生き物たちがいなくなる可能性もあるのです。

 上記の事例において、ラッコはキーストーン種であり、その減少は環境に大きな影響を与えています。

キーストーン種を見つけることは難しい

 キーストーン種が環境に大きな影響を与えることを説明しましたが、実際にキーストーン種を見つけることは困難を極めます。多くの場合、ある生物が減少したのちに、それがキーストーン種であったことが判明します。

 しかし、もしその種が絶滅してしまえば、再び蘇らせることは困難であり、生態系は崩壊します。

 絶滅危惧種の中にキーストーン種がいるかもしれない

 2017年時点で、レッドリストには900種以上の種が絶滅種に、20,000種以上が絶滅危惧種に指定されています。これらの中には、重大な役割を担っているキーストーン種が含まれている可能性もあります。

 生物が絶滅してから、あの種はキーストーン種だったらしい、となっても時はすでに遅いです。したがって、絶滅危惧種を保全する必要は十分にあるのです。

 

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